- 制作
- 2016年
- クライアント
- リクルート Media Technology Lab./ニジボックス
- 出演
- 田山由起
- 監督・脚本
- 渡邉直也
- 撮影
- 近藤将大
イトーヨーカドー案件を終え、しばらくは採用動画や制作ヘルプ業に徹する日々。しかし、心の奥底では「またドラマを創りたい」という想いが、マグマのように沸々と湧き上がっていました。そんな2016年3月1日ごろ、一本の電話がその後の私のキャリアを大きく動かすことになります。「3月20日までにWEBドラマを納品してほしい」決算期ならではの、無茶振り以外の何物でもない依頼。
しかし、私の心は決まっていました。「やりたい!」。その一心で「やります!」と即答したあの日。これは、後のリクルート様との長いお付き合いの原点となった、がむしゃらで、必死だった日々の制作記録です。
コンペサイトからの異例の電話と「本当にできるんですか?」の眼差し
当時、私はよくコンペサイトを眺めていました。落選続きではありましたが、「急募!3月末納品でWEBドラマ」という文字が目に飛び込んできたのです。
クライアント名も伏せられていましたが、何かに導かれるように応募ボタンをクリックしました。
すると約30分後、見知らぬ番号から着信が。 「○○(コンペサイト)の者です。ご応募ありがとうございます。 ちなみに、本当にご対応可能ですか?」
これまでメールでのやりとりしかなかったサイトからの、異例の電話確認。この時点で、案件の尋常じゃないスピード感を察しました。
数日後、クライアントとの打ち合わせへ。仲介のニジボックス様、そしてクライアントであるリクルートの新規事業チームの皆様を前に、私は「やります!やり切ります!」と宣言しました。
めちゃくちゃな不安で押し潰されそうになりながらも、その言葉を口にすることで、自分自身を奮い立たせていたのかもしれません。
難航必至のロケ地問題を解決した、一か八かの「直談判」
与えられた猶予は、次の対面ミーティングまでのわずか3日間。
それまでに企画書、台本、香盤表、出演者候補のリストアップまで、すべてを揃えなければなりません。まずは信頼できる制作スタッフ、カメラマン、編集エディターを集め、撮影日を確定させることから始めました。
納期から逆算し、動かせないゴールを決めることで、チーム全員の腹を括らせるためです。本作のテーマは「保育園の一時保育受け入れ検索サービス」。私自身も子どもを保育園に預ける親として、喉から手が出るほど欲しいサービスでした。その「当事者意識」が、クライアントの想いを汲み取った台本をスピーディーに書き上げる原動力となりました。
台本初稿


※初稿全文読みたい方はお問い合わせください。
しかし、最大の壁は「ロケ地」です。
特に保育園の撮影許可を得るのは至難の業。ハウススタジオを借りる予算もありません。 そこで思いついたのが、当時、息子が通っていた「ちゃのま保育園」でした。
オーナーさんは、ご自身のお子さんを保育園に入れられなかった経験からこの園を設立した方。きっと、この新サービスの意義を理解してくれるはず。私は一か八か、サービスの概要とリクルートの担当者様たちの熱い想いを伝えに、保育園へ直談判に向かいました。
すると…「日曜日ならいいですよ」。まさかの快諾!勢いづいた私たちは、さらなる一か八かの勝負に出ます。それは、お客様であるリクルート様のオフィスを撮影場所としてお借りできないか、という交渉です。
二回目の打ち合わせ。キャストや保育園のロケ地が決まったことを報告し、お客様に喜んでいただいたその場で、私と制作担当の中井くんで恐る恐る切り出しました。「あのー…ご相談なんですが…」「あ!いいですよ!日曜なら空いてますし」難航すると思っていたロケ地問題が、あっさりと解決してしまったのです。
「当事者意識」と「息子作戦」という最終兵器
撮影当日まで、私が最も気にしていたこと。それは「子どもの体調不良」です。こればかりはどうにもコントロールできません。かといって、バックアップの子役を用意する予算もない。
そこで思いついたのが、究極のリスクヘッジ「息子作戦」。
いざという時は、ちゃのま保育園に通う我が息子をバックアップとして投入しよう、と。幸い、子役のりおちゃんは最後まで元気に演じきってくれました。さすがプロです。 (せっかくなので、スタンバイしていた息子もワンカットだけ出演しています笑)
なぜ超短納期プロジェクトは成功したのか?成功を支えた5つの教訓
撮影も編集も順調に進み、3月20日納品のところを、3月18日には納品完了。

なぜ、この超特急プロジェクトは成功できたのか。
当時つけていた日記には、その要因がこう記されていました。
・お客様の「作りたいもの」より「創り手の想い」を台本に落とし込む。
・裏方チームを中心に撮影日を先に決める。諦めもつくし、集中できる。
・とにかく早めに連絡。「メールしました」と電話するくらいの気概を持つ。
・準備に手を抜くな!特にロケハン、小道具、衣装は徹底的に。
・世の中には色んな“しがらみ”がある。それを早期に理解するため、まず自分を曝け出す。
これらのメモは、今も私の制作活動の根幹を成しています。
あの一言が、10年続く関係の始まりだった
この無我夢中で走り抜けた3週間が、今も定期的にお仕事をいただいているホットペッパービューティーアカデミー様との出会いのきっかけとなりました。
あの時、「やります!」と一言返事をした自分を褒めてあげたい。誠実な仕事が、未来の信頼を築いていく。このプロジェクトは、私にそのことを改めて教えてくれました。
▼完成したWebドラマ『CoPaNa』
(現在はサービス終了)
本記事の著者

- 合同会社ガイダンス CEO
- 映像制作の現場を熟知していたことからバーチャルスタジオ構築や生放送プロデューサーを任せられるなど…、数々の責任のあるポジションを経験。 その中で唯一自分が楽しめて、お客様にも満足していただける“WEBドラマ”に出会いました。多くのパートナーに支えられながら、常にお客様の目線に立った企画制作を行っています。
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