制作
2016年
クライアント
カルビー
出演
田中美麗(元SUPER☆GiRLS)・隆
監督・脚本
渡邉直也
撮影
近藤将大

イトーヨーカドー案件を終えた翌年、一本の電話が鳴った。
「イトーヨーカドーのWEBドラマを作った監督に、ある案件をお願いしたい」。
制作会社経由での、願ってもない指名依頼でした。

クライアントはカルビー。商品は、その夏の新商品「堅あげポテト はちみつバター味」。
しかし、この華々しい依頼の裏で待ち受けていたのは、複雑な業界構造、予期せぬトラブルの数々、そして「1人会社」の限界を痛感させられる壮絶な日々でした。これは、多くの仲間に支えられながら、私が「1人」で戦った最後のWEBドラマ制作の記録です。

【企画編】味も姿も見えない商品を、がんじがらめの制約で描くということ。

代理店を介した仕事は、これまでの直接取引とは全くの別物でした。まず、3つの大きな壁が立ちはだかります。

1.実物がない:

開発中の商品のため、味もパッケージも未確定。手探りで物語を構築するしかありませんでした。

2.厳しいブランドコンセプト:

「噛むほど、うまい。」というコピーからブレず、「和」を追求してほしいという強い要望。自由な発想は許されませんでした。

3.伝言ゲームの情報伝達:

お客様→代理店→制作会社P→制作会社AP→自分、という長い伝言ゲーム。フィードバック一つ貰うにも時間がかかり、スムーズな意思疎通は困難を極めました。

そんな中、自分の意図とは裏腹に、コンセプトワードがいつの間にか「みんな噛みしめて大人になる。」に決定。上流の電話一本で物事が決まっていく。これが、代理店仕事の洗礼でした。

最初の企画案

【体制編】「全部マルっとお願い」。それは孤独な戦いのゴングだった。

なんとか企画が通り、少し安堵していた矢先、プロデューサーから一本の電話が。
「全部マルっと請け負ってくれないか?」。
人手不足を理由に、制作の全てを私一人に委ねるという、実質的な「丸投げ」宣言でした。

頼りにしていた制作パートナー・中井くんも就職でチームを離脱。予算管理、キャスティング、ロケハン、PPM資料作成、台本、編集、そして今回はグラフィックまで…その全てを、たった一人で担うことになったのです。絶望的な状況でした。

【仲間編】点と点が線になる。現場で出会ったプロフェッショナルたち。

この途方もないミッションを成功させるには、もはや私一人では不可能。
希望の光は、これまでの現場で出会った信頼できる「仲間」の存在でした。

・カメラマン

世界中を飛び回る近藤さん。ピンポイントで空いていた「6/27」を撮影日に設定し、
全てを逆算で組み始めました。

・キャスティング

とある現場で出会ったKIOKJAPAN( https://kiokjapan.jp/ )の田中涼介社長に。
Da-iCEのマネージメントをしていた彼との出会いは、まさに運命でした。
実際、今現在もお付き合いさせていただき、数々の案件をいただいたり、助けていただいたり。いつも感謝です!

・制作補助と車両

当時同時進行で行なっていたある銀行の紹介動画案件で知り合ったで知り合った株式会社Grand Arbreの竹口社長。
この案件後も制作+車の数々の案件でお世話になりました。感謝!点と点だった出会いが、このプロジェクトで一つの線になる。「この仲間となら乗り越えられる」。最強のチーム結成が、反撃の狼煙となりました。

そしてできた絵コンテがこちら。

【撮影編】プロの仕事と、招かれざる客。

数々の難所を乗り越え、準備万端で迎えた撮影当日。しかし、前日に予期せぬ連絡が。「ウチの社員がいないのは不味いので、入社1年目のアシスタントを現場に行かせます」。この一言が、現場に混乱を招きました。

予算を無視した高級ケータリングの勝手な手配(しかも発注ミスで遅刻)、撮影場所に堂々と広げられる朝食、未成年のキャストに平然とビールを出そうとする現場理解度の低さ…。
彼のプロデューサー気取りの振る舞いに頭を抱える中、現場を救ってくれたのは、やはり仲間たちでした。混乱をものともせず、冷静かつ的確な判断で撮影を進めていく近藤さん。オンタイムで現場をさばく竹口さん。仲間たちのプロの仕事ぶりが、荒れ狂う現場の唯一の光でした。

【編集編】再び訪れた悪夢。「2分削って」という非情な一言。

総尺5分、音楽も入り、会心の出来栄えとなったオフライン初稿。クライアントの反応も上々でした。
しかし、最終決裁者からのフィードバックも一言。「いい感じだね!でも3分以内にして。」2分も削る!?再び、あの監督が最も苦しむ「カット」という作業が待っていました。

絶望の中、自転車を漕ぎながら帰路につく私。しかし、風を切りながら頭を冷やすうち、俯瞰で物語を捉え直す「第三者目線」が生まれ、カットの活路が見えてきたのです。

【作曲編】クリエイターの「好き」を繋ぐ、音楽の力

本作の音楽に触れる上で、欠かせない作品があります。 それは、この案件の少し前に制作したAEON「PEACE FIT」のWEBCMです。
ターゲットは私たちと同じ30代〜40代。企画の核としたのは、この世代なら誰もが心を揺さぶられるであろう、「懐かしさを感じるRAP」でした。

この企画を実現してくれたのが、メンバーに前職の後輩がいた縁で依頼した
「ザ・おめでたズ」( https://thaomedetaz.tumblr.com/ )です。
自分の「好き」を信じ、信頼できる仲間と形にしていく。クリエイターとして、これほど楽しいことはありません。
この時の確かな手応えがあったからこそ、今回のカルビーという大きな案件でも、迷わず「ザ・おめでたズ」のやじまたくまさんに音楽を託すことができたのです。

【未来編】もう1人じゃない。仲間と作った、その先へ。

この作品への想いを一言で表すなら、それは「仲間と作った」ということに尽きます。1人では絶対に完成できませんでした。そして、この経験は私に大きな決意をさせました。
1日3時間しか家に帰れず、土日もGWも休みなく働く日々。1人会社の限界を痛感し、「会社を大きくしよう。もう1人じゃない、チームで戦おう」と心に誓ったのです。
苦しみも、理不尽さも、そして最高の仲間との出会いも。その全てが、今の私と、私たちの会社を創り上げています。

▼今回はカットしなかった部分も含めたディレクターズカット版をご覧ください。

本記事の著者

渡邊直也
渡邊直也合同会社ガイダンス CEO
映像制作の現場を熟知していたことからバーチャルスタジオ構築や生放送プロデューサーを任せられるなど…、数々の責任のあるポジションを経験。 その中で唯一自分が楽しめて、お客様にも満足していただける“WEBドラマ”に出会いました。多くのパートナーに支えられながら、常にお客様の目線に立った企画制作を行っています。