制作
2019年
クライアント
Avex Management
出演
岩岡徹(Da-iCE)/鳴海唯
監督・脚本
渡邉直也
撮影
藤岡大輔

電波も途切れがちな奥会津の旅館。別案件の撮影で心身ともに疲弊していた私の携帯が、運命的な着信を告げました。相手は、カルビー案件でお世話になったKIOKJAPANの田中社長。「Da-iCEが結成6周年を迎えるので、楽曲にちなんだWEBドラマを作りたいんです」
その電話が、地獄のように過酷で、しかし最高にクリエイティブな創作活動の幕開けでした。これは、絶望的なスケジュールと度重なるダメ出しの末に、私自身が長年かけて築いた“タブー”を打ち破り、会心の代表作を生み出すまでの、ジェットコースターのような制作記録です。

【第1章】絶望的な幕開け。納期は約2ヶ月、未聴の2曲、重すぎるプレッシャー×2

電話を受けたのは1月末。希望納期は3月中。その時点で、私は奥会津のドラマと「200本強のHowto動画」という2つの巨大プロジェクトの編集を抱えていました。常識的に考えれば、答えは「NO」です。

しかし、私の口から出たのは「やる!やりたい!」という即答でした。「楽しければなんでもやる」という信念が、理性に勝った瞬間です。
実は以前、Da-iCEとKIREIMOさんのコラボMVを監督させていただき、そのMV撮影中、メンバーの徹さんと待ち時間に少し立ち話していて「普段、どんな撮影されるんですか?」「企業さんや商品のプロモーション用ドラマを作ってます」と答えた縁から始まったみたいで、その流れでお声がけいただきました。

Da-iCE この曲のせい

とはいえ、当時の私はDa-iCEの楽曲に詳しくありませんでした。田中社長に選曲をお願いし、決まったのは「もう一度だけ」と「TOKI」。奥会津の宿で楽曲と歌詞とにらめっこする日々が始まりましたが、アイデアは一向に浮かびません。元マネージャーとして彼らと苦楽を共にしてきた田中社長の、作品への強い想いが、プレッシャーとしてのしかかりました。

【第2章】二転三転、迷走するプロット。「なべさん、本気出してます?」

苦しみの中、漫画家の川野倫(ごめん)先生
https://x.com/gomendayoの作品や、大好きなレキシの楽曲から着想を得て、

レキシ「最後の将軍feat森の石松さん」

「別れと再会」をテーマにした2部作の企画案を提出。

しかし、田中社長から返ってきたのは、「なべさん、本気出してます?」という厳しい一言と、「もう企画案いらないので台本作り始めてください」という無茶振りオーダーでした。心が折れかけながら、今度はYouTubeのダイエット漫画広告からヒントを得て、「兄に恋人を奪われる」という禁断のテーマで台本を執筆。

「もう一度だけ」

「TOKI」


※原案を全文読みたい方はお問い合わせください。

一度は「いいじゃないすかー」とOKが出たものの、その数日後、さらなる連絡が。「すみません。不倫とSEXはNGで。」コンセプトは、完全に白紙に戻りました。

【第3章】「そうだ、彼女を殺してしまえ!」追い詰められた末の、覚醒

万策尽きた夜。ビールを片手に旅館の部屋でPCと睨み合い、私はついに開き直りました。「せっかくの機会だ。自分の『好き』を全部詰め込んでやろう」と。邦画なら『ラブレター』、洋画なら…と考えた瞬間、稲妻が落ちました。

「!!!」シックスセンスだ!そうだ、彼女を殺してしまえ!(言葉は荒いですが、本当にそう叫んでいました)

実は、私の誕生日の前日は父の命日。そのせいか、私は無意識に「人が死ぬ」というテーマを自分の企画の中でタブー視してきました。
でも、幽霊なら? この御法度を、今こそ破るべきじゃないか?自分で自分を納得させ、私は『シックスセンス』をモチーフにした恋愛ドラマを書き始めました。この大転換が、後にメンバーの徹さんからも絶賛される、切なくも美しい物語の核となったのです。

【第4章】奇跡のキャスティング。鳴海唯さんとの運命的な出会い

物語の方向性が固まると、次は最大の難関、ヒロイン探しです。「買取り」という権利条件の壁は厚く、オーディションは難航。イメージに合う女優さんは見つかりません。そんな中、Instagramで「この人しかいない」と思える方を発見。後の朝ドラ女優、鳴海唯さんでした。https://www.instagram.com/narumi_05/?hl=ja

ダメ元でDMを送るも、返信はありません。オーディション当日も決め手に欠け、途方に暮れていたその時、一本の電話が。それは、DMを送った鳴海さんの事務所のマネージャーからでした。「これは運命だ!」と直感し、後日改めてオーディションを開催。彼女が役に入った瞬間、ヒロインがそこにいました。

【第5章】地獄の先にあったもの。仲間と創り上げた、会心の一作

予算の都合で2日間ほぼ徹夜の強行撮影、スタイリストのトラブル、そしてアナモフィックレンズでの撮影がもたらす地獄のような音声同期作業…。数々の困難がありましたが、メンバーの徹さんからの的確なアドバイスや、作曲家のトミーさんの素晴らしい仕事に支えられ、作品は磨かれていきました。
※トミーさん、その節は本当にありがとうございました。。
https://www.facebook.com/Tommy411

【最終章】「好き」を詰め込んだ渡邉自身の新たな代表作

自分の「好き」を信じ、長年のタブーを破って創り上げたこの2部作は、今でもたまに見返すほど、私にとって大切な作品です。後にDa-iCEがレコード大賞を受賞した夜、私は田中社長と共に涙を流しました。ファンの方々にもこのドラマがたくさん届いていると聞きます。苦しみの果てに、「本当にやりたい作品を作れた」と、心の底から実感できた、クリエイターとして至福の瞬間でした。

Da-iCE もう一度だけ

Da-iCE TOKI

本記事の著者

渡邊直也
渡邊直也合同会社ガイダンス CEO
映像制作の現場を熟知していたことからバーチャルスタジオ構築や生放送プロデューサーを任せられるなど…、数々の責任のあるポジションを経験。 その中で唯一自分が楽しめて、お客様にも満足していただける“WEBドラマ”に出会いました。多くのパートナーに支えられながら、常にお客様の目線に立った企画制作を行っています。