制作
2019年
クライアント
奥会津地域
出演
Lemi Maria Duncan / Ciel Liu Bei
監督・脚本
渡邉直也
撮影
藤岡大輔

カルビーのWEBドラマから約3年。会社は成長し、社員も増え、オフィスも神田から神保町へと移転しました。その頃、制作していたWEBCMがこちら。

<コクヨ>

<ガンホー採用動画>

<AirRESERVE(エアリザーブ)>

<AirWAIT(エアウエイト)>

<Airレジ>

しかし、その成長とは裏腹に、私の心は乾いていました。「本当にやりたいこと」を封印し、経営者としての責任とプレッシャーに苦しんだ3年間。そんなモヤモヤした日々の中、一本の電話が、再び私の創作魂に火をつけることになります。これは、奥会津の深い雪景色のように、静かで、しかし力強い情熱を取り戻すまでの物語です。

【第1章】経営者としての苦悩。やりたいことを封印した3年間

1人会社を卒業し、守るべき社員とその家族が増えるにつれ、プレッシャーは日に日に増していきました。
かつて自分が会社員時代に抱いていた「なぜ給料が上がらない?」「なんでこんな仕事を?」といった不満が、今度は経営者として自分に突きつけられる毎日。

売上を立てなければならない。弱肉強食のこの業界で、会社を存続させなければならない。そのためには、経費率が95%を超えるような「儲からない」WEBドラマ制作は後回しにせざるを得ませんでした。「こんなはずじゃなかった。本当にやりたい仕事をやるために起業したのに」。心の中には、ドラマを創りたいという熱が燻り続けていました。

【第2章】転機は突然に。インバウンド誘致という新たな挑戦

そんなある日、知り合いのプロデューサーから電話がありました。
「うちでは予算的に厳しいから、やれないか?」。それは、大手広告代理店が手がける地域創生事業、インバウンド誘致の動画制作でした。
そちらがこれ。

<雪国観光圏>

海外経験は乏しい私でしたが、不思議と自信がありました。
過去に企業の外国人労働者誘致動画を数多く手がけ、彼らのインタビューを通して「日本の日常」がいかに魅力に溢れているかを実感していたからです。この「雪国観光圏」での実績が評価され、アートディレクターの方から直接ご相談をいただきます。「奥会津地方のインバウンド誘致動画を、コンサルティングから入ってくれないか?」。2019年3月末納品、約8ヶ月に及ぶ大きな挑戦が、静かに幕を開けました。

【第3章】雪深き土地の宝物。4度のロケハンで見つけた5つの魅力

私たちは、ヒアリングとロケハンのため、計4回、奥会津地方へ足を運びました。そこで出会ったのは、私たちが「課題」だと思い込んでいたものが、実は「価値」であるという発見の連続でした。

1.「不便」を楽しむ時間:

豪雪地帯を走る唯一の鉄道「只見線」。この交通の悪さこそ、外国人観光客にとっては「時間」や「過程」を楽しむ贅沢な体験でした。

2.未来を創るUターン/Iターン:

古民家を改装し、ITビジネスを営む若者たちとの出会い。
SHARE BASE 昭和村( https://showa.sharebase.jp/
逆境をチャンスに変える力強さがそこにありました。

3.面白い祭りや人々:

迫力満点の雪まつり。「世界一不味いお土産(笑)」と自虐する店主。 「こんなジャンクフード、普通に食堂で食べれるんですよ(笑)」とか。

地元の人々の人間的な魅力に溢れていました。

4.雪国の言葉「ねっかさすけねえ」:

なにか方言とかないですか?とヒアリングの段階で伺ったのですが「特にないかもー」のお返事でした。
そんな中、米焼酎で世界的に有名な「NEKKA」さんを紹介してもらいました。https://nekka.jp/

NEKKAさんに取材にいき、そもそもNEKKAってどういう意味ですか?と聞くと、NEKKAは「ねっかさすけねえ」からきており「さすけねえ」とは問題ない!平気!大丈夫!的な意味で、「ねっか」その「さすけねえ」の前につけることで「全く」「全然」の意味なんだそうです。「全く問題ない」という意味のこの方言は、厳しい自然と共に生きる人々の、優しさと力強さの象徴でした。

5.温かい文化「火の用心」:

子どもたちが一枚100円でお小遣い稼ぎに書くという「火の用心」の習字。地域全体で子どもを育む、温かい文化に触れました。
ロケハンの様子。

【第4章】予算の壁を壊す合わせ技。200本動画との同時進行プロジェクト

リサーチを重ねるうち、訴求ターゲット別に「只見線編(アジア圏向け)」「さすけねえ編(欧米富裕層向け)」の2部作構成が見えてきました。しかし、予算の壁が立ちはだかります。
その時、偶然にも別企業から「200本強のHowto動画制作」という大規模な依頼が舞い込みました。私は、この2つのプロジェクトをドッキングさせるという大胆な策を思いつきます。キャスト、ロケ地、スタッフを共有し、コストを抑えながらクオリティを最大化する。

ビジネス交流会でお世話になった展示会プロデューサーの竹村社長
https://www.superpenguin.jp/ )にシンガポールでメディアディレクターをされているCiel Liu Beiさんや以前から信頼していたナレーターのダンカンさん
https://danielduncan.com/ )の妹・Lemiさんなど、人の「縁」を最大限に活かしたキャスティングで、この難題を乗り越えようとしました。

【第5章】荒ぶる現場に、あの男が帰ってきた。

しかし、プレイングマネージャーとしての私のマネジメント不足が祟り、社内の雰囲気は悪化。「現場の空気はフィルムに映る」。
師の教えを思い出し、私は外部のプロの力を借りることを決断します。

白羽の矢を立てたのは、あのカルビー案件でも私を救ってくれた、救世主・竹口さんでした。
大雪の山道をものともせず、撮影の裏で完璧な交渉と準備を進める彼の姿は、まるで分身の術を使っているかのようでした。そして、キーアイテムとなる大量の「火の用心」は、かつて芦田愛菜さんのドラマでも協力してくれた娘に依頼。「1枚いくら?」と、しっかりお小遣い交渉をされましたが(笑)。

【最終章】「作りたい」という情熱が生んだ、会社の新たな代表作

アートディレクターの方の手によって、2本のドラマはブランディングされ、世界に発信する作品へと昇華しました。
実質5日間の撮影の裏には、半年間に及ぶ2つの巨大プロジェクトの進行がありました。マネジメントに悩み、経営の難しさに打ちのめされた日々。しかし、その末にたどり着いたのは、やはり「作りたい」という純粋な気持ちでした。この2本の作品は、会社として、そして個人として、再び前を向いて歩き出すための自と誇りを与えてくれた、私たちの新たな代表作となったのです。

▼奥会津・只見線とその周辺の街並みの魅力を伝えるWebドラマ
『A view of Okuaziu from Tadami Line, the world’s most romantic railway.』

▼奥会津で生きる人々を暖かさを描いたWebドラマ
『A trip to discover “Sasukene”』

本記事の著者

渡邊直也
渡邊直也合同会社ガイダンス CEO
映像制作の現場を熟知していたことからバーチャルスタジオ構築や生放送プロデューサーを任せられるなど…、数々の責任のあるポジションを経験。 その中で唯一自分が楽しめて、お客様にも満足していただける“WEBドラマ”に出会いました。多くのパートナーに支えられながら、常にお客様の目線に立った企画制作を行っています。